くらし・教育

〈教育〉 子どもと歩む――“育自”日記 ポエム編 2025年8月14日

 子どもと家族をテーマにした読者からの詩を「子どもと歩む――“育自”日記 ポエム編」として紹介します。併せて、詩人・エッセイストの浜文子さんのコメントも掲載します。

◆「爺婆の宝物」

 まだですか もうすぐだ ほら来たよ
 婆ちゃん爺ちゃん
 爺婆の大切な宝物が駆け込んでくる
 大きなおでこに
 小さなお鼻が愛らしい
  
 蟬の抜け殻におっかなびっくりだった
 もう青虫も団子虫も怖くないよ
 ほら婆ちゃん触ってみて
 婆ちゃんはダメ
 たくましくなったものだ
  
 お友達いっぱいできたのかな
 新幹線からパイロット
 次は何に変身するだろう
 出来れば
 未来も覗いて見たくなりました
 見えますよ 元気でいれば
 そうですね 元気でいれば見えますね
  
 作・藪幸博
 (兵庫県西宮市 86歳)

◆「大切なこと」

 ねぇお母さん
 お母さんは みんなの中で
 あきちゃんが一番可愛いよね?
 そう問いかける幼い瞳
  
 あきちゃんに分かるかなぁ?
 まだ早いかなぁ?
 そう言いながら
 小さな手を取り開くお母さん
 親指を指して これがお父さん 
 人差し指を指して これがお母さん
 中指を指して これがお姉ちゃん
 薬指を指して これがお兄ちゃん
 小指を指して これがあきちゃん
 どのこもみんな可愛くて大切だよね
 誰かが いいなぁ一つちょうだい
 と言ったらどうする?
 どのこもみんな可愛くて
 あげたく無いよね?
 それと同じことだよ とお母さん
 あきちゃんに分かるかなぁ?
 とお母さん
  
 大丈夫 あの日教わった大切なことは
 何十年経った今も
 ずっと忘れずに憶えているよ
 お母さん 沢山の愛情をありがとう
 あなたの子供で良かった
 あなたの子供で幸せです
  
 作・大沼明子
 (埼玉県狭山市 53歳)

◆「そう言うもんだよ」

 ある日のこと
 「チカちゃんのママは
 サッチー(私のこと)が
 生んだのに
 全然 言う事を
 聞いてくれないんだから」
 と ポツリとつぶやくと
 間髪をいれずに
 「子どもは皆
 そう言うもんだよ」と
 私は驚くやら
 思わず笑ってしまい
 孫の顔を
 二度見してしまいました
 「その通りだね」と納得
 小学四年生の孫娘に
 教えられました
 “老いては孫に従え”
 でしょうか
  
 作・齋藤佐千子
 (東京都足立区 主婦・73歳)
  

◆「『一日』」

 ねて おきて
 また ねておきて
 よる ねるよ
 今日も一日
 おつかれさん
  
 作・上田好枝
 (北海道妹背牛町 主婦・79歳)

〈私の感想〉 詩人・エッセイスト 浜文子さん
「今日も一日おつかれさん」

 「爺婆の宝物」。幼い子がどんどん成長し、変化していく様子を一つ一つの光景と共にしっかり記憶に留め、目を細めている姿が目に浮かぶ詩です。蟬の抜け殻、青虫、団子虫もみんな作者夫婦の思い出の中に生き生きと残して、今、二人は「出来れば、この先の未来を覗いてみたい」と願います。この普遍的な思いは、読者の方々に優しい共感を呼びますね。終わりの語りかけも印象に残る美しい一編です。
 「大切なこと」。作者が幼い頃に、共働きだった母親を独占したくて、口にした問いかけを詩にしたのだとか。作者ご本人も、今はゆっくりと遠い日の出来事をかみしめる時間も生まれたのでしょうね。五本の指を見せて、具体的に家族のことを説いてみせるお母さんの姿。忘れられませんよね。時と共に記憶に鮮やかに浮かび上がる場面を言葉に変えた、この一編は意味深いです。
 「そう言うもんだよ」。子どもは、時に大人がドキリとさせられるようなことを口にするもの。作者も、さぞビックリなさったことでしょう。この作品の中では、驚き笑った後で「思わず孫を二度見してしまいました」と、作者は、その気持ちを描いています。日常から掬い取った作者の驚きを、ユーモアをプラスした所から展開した一編の味わいは、とても良いですね。
 「一日」。この詩は、十年前に十歳で病死した子の手になるものです。お孫さんの残したこの詩を、祖母の方が送ってくださいました。「院内学級で発表した生きた証の詩です」と。病児のまなざしは、静かで優しく、そして深く、自身の一日と周囲の子や大人たちにも等しく注がれ、みんなの一日を労っています。――もうお盆ですね。私は読者の皆さんと共に、この作者にそっと掌を合わせたいと存じました。
 最近の投稿詩に、八十代の方々からのものが増えました。一編ごと丁寧に読ませていただきつつ、これまでの長い人生の時間の奥から光彩を放つ出来事を、文字に移す努力に頭を垂れています。

★読者の詩を募集

 子どもとの関わりのなかで気付いたことなど、子育ての日常を詩にして投稿ください。募集要項は次の通り。
 ▼氏名、郵便番号、住所、年齢、職業、電話(ファクス)番号(※任意で携帯電話番号)を、明記してください。 
 ▼字数の目安は500字以内。短くても構いません。タイトルも記入してください。採用分には図書カードを進呈します。
 ▼原稿が当社のウェブサイトに掲載されることもご了承ください。
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