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古舘伊知郎さん「傷つくことで人は輝きを増す」 一人舞台「トーキングブルース『2026』」に向けた熱い思い 〈インタビュー〉 2026年11月5日

12月6日(日)、7日(月)に東京
※19日(土)大阪、26日(土)福岡で

 舞台には、1本のマイクと、それを照らす照明一つ――。フリーアナウンサーの古舘伊知郎さんが約2時間、社会をにぎわす時事問題から人間の悲哀や滑稽さまで、縦横無尽に語り尽くす一人舞台「トーキングブルース『2026』」が、12月6日(日)に開幕する。72歳を迎える古舘さんが追い求めるもの。言葉への熱い思いと挑戦の原動力を聞いた。

 ――1988年から続けてこられたこの舞台では、時代の移り変わりを見すえ、世間のさまざまな問題を取り上げてきました。今回の舞台を通して伝えたいことは。
 
 AI(人工知能)や孤独・孤立、デジタルについていけない自分の“情けなさ”などを語るつもりです。社会風刺や笑いも大事ですが、そればかりに汲々とするのではなく、人間の苦しみや悲しみ、世の中の不条理や不公平さを、もっと堂々と語りたいんです。
 
 時事問題を扱う舞台ですから、昨日や1週間前に起きたことも取り入れます。前後のつながりに違和感が生じることもあるけれど、それも含めて“生”の舞台。大変だけど、やりがいがあります。
 

 ――「トーキングブルース」は、自身のライフワークとも語られています。長年続けてきた本舞台の“今”ならではの魅力は?
 
 年齢を重ねて、声を張る持続力が落ちてきました。昔からのテンポで2時間以上しゃべり続けようものなら無理が来るので、今まで培ったものにすがっていては絶対に駄目だなと。衰えていく自分も見つめ、飲み込んで、老境なりの味にしていきたいですね。

 ――独自の視点と言い回しで社会問題に切り込む“古舘節”が、多くの観客を魅了しています。
 
 若い頃から僕って、実は何一つ抜きんでたところがなかった。全部が普通。それでも“しゃべり手”になりたくて、運よくアナウンサーになれました。でも、そこでも普通にしゃべるだけでは通用しないと思い、頑張るしかなかった。声がいいから採用された、みたいな“安住の場”ではなかったんです。
 
 才能がないなら、それをエネルギーにして、スポーツ実況では口数多く畳みかけたり、人がつい見過ごしそうなことに注視し、疑問を持って話したりしてきました。一つに固執すると疑問を持たなくなるので、時間をかけて観察し、考え続けて生まれる自分の“本質”を大切にしています。
 

 ――言葉には、どんな力があると考えていますか。
 
 人を救うこともある一方で、副作用もあります。同じ言葉でも受け取り方が違えば、争いにまで発展する。「言葉=人間」と言ってもいいほど、すごい力があると思っています。
 
 でも僕は不器用だから、多くの人の心をつかむことはできません。それでも、ほんの少人数でも、誰かの心に響いてくれたらと思って、言葉を紡いでいます。

 ――現代社会で生きづらさを抱える人たちに、メッセージをお願いします。
 
 僕は、人に元気を与える“エナジードリンク”のようなことは言えません。けれど今は、みんな傷つくことを避けて、どこか遠慮しているなって感じます。ぶつかり合って付く小さな傷は、やすりで磨くようなもので、その時は痛くても、後に必ず輝いていきます。なので、人とぶつかることを嫌がらず恐れずにいてほしい。そして、思い通りにならないことに嘆きながらも、そういうこともあるさと受け止められる「免疫力」を付けてほしいですね。

◆取材後記

 「僕は平凡なんですよ」。古舘さんは何度もそう口にした。“切れ味鋭い舌鋒”と評され、言葉を武器に活躍してきた達人の、意外な自己評価だった。
 物事の本質を問い、自分と向き合い続けて約50年。72歳を目前にしても、その姿勢は少しも変わらず、“老い”さえ受け入れて新たな境地を開く――。
 その“貪欲さ”こそが非凡であり、その飽くなき向上心に、生涯、自分を磨き続ける“表現者”の真髄を見た。

【記事】松浦伸二 【写真】伊野光

◆プロフィル

 ふるたち・いちろう 1954年12月7日生まれ、東京都出身。フリーアナウンサー。77年にテレビ朝日に入社。プロレス実況で人気を博し、フリーアナウンサーに転身後もF1実況などで活躍。94年から3年連続で「NHK紅白歌合戦」の司会を務める。その後、2004年からテレビ朝日系「報道ステーション」で12年間キャスターを担当し、19年4月から母校である立教大学の経済学部客員教授として教壇に立っている。

◆公演情報

 【日程・会場】12月6日(日)、7日(月) 東京・EX THEATER ROPPONGI
 【料金】9000円(税込み)
 ※このほか、19日(土)に大阪、26日(土)に福岡で上演予定

◆プレゼント

 古舘さんの直筆サイン入り色紙を、読者1人にプレゼント。応募方法は紙面をご確認ください。

全公演の詳細などは、こちらの公式ホームページから