「なぜ、いつも子どもに受けるものが描けるのですか」。漫画家・手塚治虫氏は、よくそう聞かれたという。氏はこう答えた。「とんでもない。仕事の十に一つが、子どもに認められるかどうかといったところです」▼氏ほどの巨匠でも、読者である子どもの感覚をつかむのには苦労したようだ。実際に子どもと接し、使う言葉や流行を調べ、作品に反映しても、期待した反応は、思いの外なかった。そして試行錯誤の末、子どもにおもねるのではなく、大人と同じように「自分の感覚で自分のすべてを出し切った熱意を伝えること」が大事だと思い至った(『未来人へのメッセージ』岩波書店)▼氏は自分の子どもに対しても、彼らの社会人の先輩として接することを大切にした。子どもを「一人の人格」として尊重し、真剣に向き合う。この姿勢は、私たちにとっても大切だろう▼池田先生は「子どものなかには立派な『大人』がいる。その『大人』に向かって語りかけることである。そうすれば、『人格』が育っていく」と▼今月12日から東京富士美術館で「手塚治虫展」が始まった。子どもたちの笑顔を願って筆を執った氏。その珠玉の作品に親しみながら、親子の対話を深める夏にしてはどうか。(庶)
「なぜ、いつも子どもに受けるものが描けるのですか」。漫画家・手塚治虫氏は、よくそう聞かれたという。氏はこう答えた。「とんでもない。仕事の十に一つが、子どもに認められるかどうかといったところです」▼氏ほどの巨匠でも、読者である子どもの感覚をつかむのには苦労したようだ。実際に子どもと接し、使う言葉や流行を調べ、作品に反映しても、期待した反応は、思いの外なかった。そして試行錯誤の末、子どもにおもねるのではなく、大人と同じように「自分の感覚で自分のすべてを出し切った熱意を伝えること」が大事だと思い至った(『未来人へのメッセージ』岩波書店)▼氏は自分の子どもに対しても、彼らの社会人の先輩として接することを大切にした。子どもを「一人の人格」として尊重し、真剣に向き合う。この姿勢は、私たちにとっても大切だろう▼池田先生は「子どものなかには立派な『大人』がいる。その『大人』に向かって語りかけることである。そうすれば、『人格』が育っていく」と▼今月12日から東京富士美術館で「手塚治虫展」が始まった。子どもたちの笑顔を願って筆を執った氏。その珠玉の作品に親しみながら、親子の対話を深める夏にしてはどうか。(庶)