企画・連載
〈SDGs×SEIKYO〉 解説編「どうして飢餓はなくならないの?」 2022年5月19日
「SDGs×SEIKYO」の解説編「ちーちゃんと考える 未来のカタチ」。今回は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標2「飢餓をゼロに」を取り上げます。
格差の是正と持続可能な農業が必要
カッパさん、どうして難しそうな顔をしているの?
ちーちゃんたちの未来が心配なんだよ。海や川の魚も減っているし、何より、人間がすごいペースで増えているだろ。ご飯を食べられない人が多くなっているんじゃないかな?
日本は人口が減ってるって父さんが言ってたけど、他の国では増えてるの?
ああ。今は世界全体で78億人だけど、2050年には約100億人になるといわれている。今でもちゃんと食べられない人が大勢いるのに、その時には、2010年に比べて1・7倍の食料が必要になるんだよ。
えっ! そんなに! 今はどれくらいの人が、食事に困ってるの?
飢餓に苦しんでいる人が、8億1100万人いるといわれている。世界の10人に1人が毎晩、おなかをすかせたまま眠りについているんだ。
知らなかった……。食べる物が足りないの?
いいや。世界全体では年間26億トンの穀物が生産されていて、捨てられずに平等に行き渡れば、1人当たり330キロ食べることができる。日本人は年間154キロの穀物を食べているといわれているから、十分足りるはずなんだ。
じゃあ、どうして10人に1人が満足に食べられないの?
世界全体では十分な食料があっても、それを手に入れることができない、格差の問題があるんだ。紛争や貧困、自然災害や経済の低迷など、さまざまな理由で食料危機が起きている。
なかでも紛争が最も深刻な状況を生んでいて、コンゴ民主共和国では人口の33%に当たる2180万人、イエメンでは45%に当たる1350万人、アフガニスタンでは42%に当たる1320万人、シリアでは60%に当たる1240万人が、飢餓に苦しんでいる。ウクライナ危機も、新たな食料問題を引き起こすといわれているんだ。
ひどい……。やっぱり平和が大事なんだね。
1990年から2015年の25年間で、極度の貧困層は20億人から7億人にまで減った。でも、紛争や気候変動が原因で、近年は飢餓で苦しむ人が増えている。
一昨年からは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)も状況を悪化させているんだ。子どもが5歳未満で亡くなる原因の45%が、栄養不良に関係しているとされているから、問題は深刻だ。
どうすれば解決できるの?
まずは、飢餓や貧困に苦しむ国を、国際社会が協力して支援して、食べ物が平等に行き渡る社会を築く必要があると思う。
それに、食料の生産量を増やすには環境にも配慮しないといけない。これまで通り、大規模な農業で生産を増やしていけば、生態系が壊れてしまうかもしれないから。
SDGsの目標2は、「飢餓を終わらせ、食料の安定確保と栄養状態の改善を実現し、持続可能な農業を促進する」と掲げている。自然環境や生態系を維持する持続可能な方法で生産量を増やして、飢餓をなくすことが求められているんだ。
ちーちゃん 名前は知恵。竹林家の3人きょうだいの次女。
カッパ 環境問題を憂う。子どもと一緒に、よく川や海のゴミを拾っている。
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