信仰体験

〈Seikyo Gift〉 脳性まひのわが子がくれた勇気〈生きるよろこび 信仰体験〉 2025年1月25日

未来を照らす金メダル
蓮音は師子の子 「ナンミョーのおかげだね」

 
 【横浜市磯子区】母の愛には、絶望を希望に、苦難を感謝に転換していく力がある。水上ありすさん(34)=副白ゆり長=と、脳性まひの長男・蓮音くん(5)が歩んだ一歩一歩。その足跡を、水上さんがこれまで書き残してきた手記に載せて紹介する。(2024年11月24日付)

信心を教えてくれる息子へ

 〈蓮音は1歳半の時、脳性まひだと分かったね。お医者さんから右半身まひは一生治らず、「歩けないかもしれない」って。“あの時、帝王切開を選んで、1秒でも早く産んであげられていたら”と涙し、葛藤してきたママを、蓮音はいつも励まし、前を向かせてくれました〉
  
 2019年(平成31年)3月9日。蓮音くんは北海道で産声を上げた。「サンキューの日だね」。夫婦は、難産を越え、腕の中で眠るわが子に、ほほ笑みかけた。

 蓮音くんの病名を聞いたのは、夫・大輔さん(37)=男子地区リーダー=が、病を克服したばかりの頃だった。転職先の広島へ引っ越し、母子で療育センターに通った。

 〈療育では、一人で靴を脱げるようになったり、給食の最後の一口を食べ切るまで、ゆっくり見届けられたり。蓮音と真正面から向き合えた親子タイムは、かけがえのないものでした。
 少しずつ右手が開くようになってきて、2歳3カ月で初めて歩き始めた蓮音。訓練では、いっぱい褒めてもらって、成長ぶりを喜んでもらえて。
 “ありのままで素晴らしい存在なんだ”。そう気付くことができた蓮音とママは、幸せ者です〉

 1年間の療育センターを終えた時、水上さんは手記を書いた。「大きな使命があるんだよ!」というタイトルで。

 その言葉は、北海道でも広島でも、座談会や地域の会館に行くたびに、何度もかけられた言葉。水上さんの心を、いつも持ち上げてくれた。「これが池田先生のつくられた世界」だと感じた。

 3歳から幼稚園へ。転びやすい蓮音くんは、いつもヘッドギアを着けていた。不安の中で迎えた運動会のかけっこ。よーいどんの合図と同時に、スタートラインで置いてきぼりにされた。それでも懸命にゴールにたどり着いた姿に、桜梅桃李の輝きを教えられた。

 昨年、蓮音くんの右足は筋肉の硬直により、常につま先立ちのような形になった。2カ月間、母子で入院した。

 固まった筋肉を和らげる注射。幼い体に針が刺さる。痛くて怖くて、蓮音くんは泣いた。

 治療とリハビリは奏功し、右足のかかとを床に付けて歩けた。歩行も安定し、ヘッドギアを外すことができた。

 初めてかぶった制服の帽子。「みんなといっしょだね」。蓮音くんは、玄関の扉の前でうれしそうに笑った。

 そして今年から、大輔さんの故郷・横浜へ越してきた。

 〈この秋は、幼稚園最後の運動会。リレーの練習中、思うように手足が動かず「くやしい」って話してくれたよね。幼稚園の先生から、園庭で一人で何度も走り込みをしていたことを教えてもらったよ。
 「おともだちを、ぬいてみたいんだよ」って真剣な蓮音。ママは正直どう祈っていいか分からなかったから、蓮音が晴れ晴れした顔で、悔いなく、やり切れるように祈ったんだ〉
  
 蓮音くんの決意は本物だった。

 ある時、腕を振ることが速く走るコツだと聞いた蓮音くんが、ポロッとこぼした。「右手がふれないから、はしるのがおそいんだよ」

 病を自覚し始めていた。それでも諦めたり、障がいのせいにしたりはしなかった。

 家族3人で公園へ出かけると「なんびょーか、はかって」と走り始める。水上さんが「もう遅いから帰ろ?」と言っても、何回も走った。

 〈蓮音は、毎晩、北海道の未入会のじいじ(水上さんの父)とビデオ通話で一緒に勤行・唱題してきたね。大きな声で導師をつとめてくれて、今では、じいじの方から「ナンミョーできる?」って電話をかけてくれる(笑)。
 運動会当日、雨予報だったのが晴れて、「ナンミョーのおかげだね」って喜び合ったよね。
 ダンスでは右手の分も左手を大きく振って輝いていたし、リレーは本当にお友達を抜かすスゴい走りを見せてくれたね! びっくりして感動したよ!〉
  
 クラス対抗リレーでの蓮音くんは、赤いハチマキを頭に巻き、左腕を目いっぱい動かして、地面を蹴っていた。

 自分らしく生きてほしい――水上さんは、池田先生の言葉を通して、何度も蓮音くんに伝えてきた。

 「大事なことは、自分に勝つことです。昨日の自分より、一歩でも二歩でも、前に進むことです」

 同時にそれは、水上さん自身への師の励ましでもあった。

 
 〈蓮音(LEON)――海外の言葉で“ライオン”を意味します。差異を越えて世界中にお友達をつくってほしいなあとの願いが込められているよ。
 これから歩む人生、人知れず悩むようなチャレンジの連続かもしれません。
 でも、そんな蓮音だからこそ、生きづらさを抱えた誰かに寄り添うことができる。
 そしてきっと、蓮音なら師子の勇気で、障がいの有無にかかわらず友情と理解の輪を広げていける。そう強く信じています。
 いつも、ママとパパに信心のすごさを教えてくれて、ありがとう!〉
  
 蓮音くんは、来年から小学生。個別支援学級への入学が決まっている。

 「畏れ無きこと、師子王のごとくなるべし」(新1633・全1124)。たとえ何があっても大丈夫。きっと蓮音くんは、ありのままの姿で、いかなる苦難をも越えていくに違いない。

 これから先、待っているであろう輝かしい未来。その証しのように、リビングに飾られた運動会の金メダルが、キラリと光る。