新・人間革命に学ぶ

小説「新・人間革命」に学ぶ 第6巻 解説編 池田主任副会長の紙上講座 2019年3月27日

連載〈世界広布の大道〉

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第6巻の「解説編」。池田博正主任副会長の紙上講座とともに、同巻につづられた珠玉の名言を紹介する。

紙上講座 池田主任副会長
〈ポイント〉
①異文化理解の対話
②会員奉仕の精神
③御書を学ぶ姿勢

 第6巻「宝土」「遠路」の章では、山本伸一が1962年(昭和37年)1月から2月にかけて、イラン、イラクなど、海外7カ国を訪問した様子が描かれています。

 訪問の目的の一つは、宗教事情の視察でした。中東はイスラム教発祥の地です。伸一にとって、イスラムの文化や歴史を肌で感じることは、世界広布を展望する上で、極めて大切なことだったのではないでしょうか。

 同年1月30日、伸一は「人間の精神の力によって、人類の融合と永遠の平和を開こう」(29ページ)と、イラン・テヘランに中東訪問の第一歩をしるします。その道は、「遠く、はるかな道程ではあるが、断じて進まねばならぬ、彼の使命の道」(同)でした。

 「遠路」の章の最後には、「広宣流布の道は、遠路である。遠路なればこそ、一歩一歩の地道な歩みが大事だ。遠路なればこそ、何ものにも挫けぬ、信念と勇気の火を燃やし続けることだ」(163ページ)と記されています。この一節を、私たちは心に刻みたいと思います。

 中東訪問の場面では、異文化理解と文明間対話という重要なテーマについてつづられています。

 神の唯一絶対性を説くイスラム教との対話は難しいのではないかとの同行した青年部の質問に対し、伸一は「同じ人間として、まず語り合える問題から、語り合っていけばよい」(59ページ)と答えます。

 さらに、「大聖人をはじめ、釈尊、イエス・キリスト、マホメットといった、各宗教の創始者が一堂に会して、『会議』を開けば、話は早いのだ」(60ページ)との戸田先生の言葉を引用し、「現在の人びとが、民衆の救済に生きた創始者の心に立ち返って、対話を重ねていく以外にない」(61ページ)と語っています。

 人間として互いを認め合い、語り合っていく対話こそ、異文化理解を深める上で最も大切な心構えなのです。

 また、エジプト訪問の折には、ある学者と文明についての対話が繰り広げられます。学者から「高度に発達した文明をもった国々が滅び去った共通の原因」(129ページ)を問われ、伸一はこう答えます。「一国の滅亡の要因は、国のなかに、さらにいえば、常に人間の心のなかにあるととらえています」(130ページ)

 底流で歴史をつくり、歴史を動かすのは、人間の強靱な意志の力です。この視点で歴史を見るならば、「歴史は単に過去の出来事ではなく、人間の生き方の、現在と未来を照らし出す道標として、光を放つ」(同)のです。

民衆蘇生のドラマ

 さて62年は、学会員による布教の波が一段と加速していた時代でした。「加速」の章では、社会の日陰ともいえる福岡市の“ドカン”地域でのメンバーの蘇生のドラマが描かれています。

 経済苦や病気など、多くの苦悩を抱えた“ドカン”地域の人々にとって、信仰は希望の光となり、生きる勇気をもたらす力となりました。各人が信仰で得た智慧と勇気で努力を重ね、数々の功徳の体験が生まれました。

 彼らの生きる力となったのが、山本伸一の指導でした。「メンバーは、聖教新聞に掲載された、伸一の会合での指導や御書講義を、貪るように読み、信心を学んでいった」(185ページ)のです。

 伸一の心は常に、最も大きな苦悩を抱えた人々に向けられていました。幹部に対して「苦労している同志のことを、いつも気遣い、励まし、勇気づけ、身を粉にして、奉仕していくことです」(199ページ)と指導します。さらに「私とも呼吸を合わせていただきたい。私と呼吸を合わせていくには、広宣流布の全責任を担おうとする、強い一念をもつことです」(同)と語っています。この「会員奉仕の精神」こそ、学会の根本です。同志に尽くし抜く「心」が、皆を鼓舞していくのです。

奥底の一念

 「若鷲」の章では、伸一が学生部員の要請に応え、「御義口伝」講義を開始した場面が描かれています。

 伸一は学生部に対して、探究心をもってほしいと念願します。「さまざまな思想・哲学と比較相対すればするほど、その真価が明らかになるのが仏法である」(329ページ)からです。

 そのことに、誰よりも挑んできたのが、伸一自身でした。第3巻の「仏陀」の章で釈尊を、第5巻の「歓喜」の章でイエス・キリストを、そして第6巻の「宝土」の章でマホメットと、世界三大宗教の創始者の生涯を描いています。インド、ヨーロッパ、中東を巡る中で、いかに世界広布を伸展させていくのかを思索していたのです。

 また、「若鷲」の章で重要なのは、御書を学ぶ姿勢です。ここでポイントを2点挙げたい。

 第一に、御書は信心で拝することです。学生部員に、伸一は厳しく指導しています。「御書を拝読する場合は、まず“真実、真実、全くその通りでございます”との深い思いで、すなわち、信心で拝し、信心で求め、信心で受けとめていこうとすることが大事です」(338ページ)。さらに、「西洋哲学は“懐疑”から出発するといえるかもしれない。しかし、仏法を学ぶには、“信”をもって入らなければならない」(同)とも語っています。

 第二は、御書の通り実践していくことです。「御書は、身口意の三業で拝していかなければならない。御書に仰せの通りに生き抜こうと決意し、人にも語り、実践し抜いていくことです」(同)と述べています。

 伸一は、義務感で御書を学ぶのではなく、地涌の使命を自覚し、能動的に研さんをしていくことを呼び掛けています。そして、「学会の活動をしている時も、御本尊に向かう場合も、大事なのは、この奥底の一念です。惰性に流され、いやいやながらの、中途半端な形式的な信心であれば、本当の歓喜も、幸福も、成仏もありません」(359ページ)と語っています。

 「能動」の信心に、自身の成長も、信仰の歓喜もあるのです。

 第6巻が「聖教新聞」に連載されたのは1996年(平成8年)9月から翌年4月までです。当時、学会には卑劣なデマや中傷の嵐が吹いていました。
 「波浪」の章に記されています。「讒言を打ち破るものは、真剣さです。全精魂を傾けた生命の叫びです。全員が一人立ち、師子となって、学会の正義と真実を語りに語り、訴えに訴え抜いていってこそ、勝利を打ち立てることができるのです」(257ページ)と。

 広布とは、学会の真実を宣揚する言論の戦いです。「師子王の心を取り出して」(御書1190ページ)、力強く創価の正義を師子吼していきましょう。

<名言集>
●一瞬一瞬を燃焼

 永劫の太陽の輝きも一瞬一瞬の燃焼の連続である。使命に生きるとは、瞬間瞬間、わが命を燃え上がらせ、行動することだ。(「宝土」の章、77ページ)

●人間関係を広げる

 人間は、ともすれば古い友人とは疎遠になりがちである。また、古い友人との交流があれば、新しい友人をつくろうとはしないものだ。しかし、人間を大切にし、人間関係を広げていくなかで、新たな世界が開かれていく。(「遠路」の章、90ページ)

●真実の仏法の道

 幹部は、自己中心的な考えや虚栄心を捨てて、徹して会員に尽くし抜こうとの一念を定めることです。そこにこそ、真実の仏法の道がある。(「加速」の章、200ページ)

●幸福の根本条件

 真の信仰とは、“おすがり信仰”ではない。自分の幸福をつくるのは自分自身である。ゆえに、どんな苦境にあっても、自分で立ち上がってみせるという“負けじ魂”こそ、幸福の根本条件である。(「波浪」の章、300ページ)

●広布は永遠の流れ

 広宣流布は、大河にも似た、永遠の流れである。幾十、幾百の支流が合流し、大河となるように、多様多彩な人材を必要とする。そして、いかに川幅を広げ、穏やかな流れの時代を迎えようとも、濁流と化すことなく、澄みきった清流でなければならない。(「若鷲」の章、368ページ)

 【題字のイラスト】間瀬健治