アラサー(30歳前後)世代が向き合う「クオーターライフクライシス」を特集する連載「わたしの『そろそろ』はまだまだ。」――第4回のテーマは「恋愛」と「婚活」。この3年間で、同じ男性と20回以上、“今彼”と“元彼”の関係を行ったり来たりしている、まっちゃさん(仮名・31歳)を取材しました。“もう別の相手を探せばいいじゃん”“試しに1回ゴール(結婚)してみるのもありかもよ”――そう言われることもしばしば。でも、“婚「活」って言っても、恋はそんなに簡単じゃないんだよ”という話を、まっちゃさんの目線で紹介します。
アラサー(30歳前後)世代が向き合う「クオーターライフクライシス」を特集する連載「わたしの『そろそろ』はまだまだ。」――第4回のテーマは「恋愛」と「婚活」。この3年間で、同じ男性と20回以上、“今彼”と“元彼”の関係を行ったり来たりしている、まっちゃさん(仮名・31歳)を取材しました。“もう別の相手を探せばいいじゃん”“試しに1回ゴール(結婚)してみるのもありかもよ”――そう言われることもしばしば。でも、“婚「活」って言っても、恋はそんなに簡単じゃないんだよ”という話を、まっちゃさんの目線で紹介します。
恋愛とは何だろう。
幼い頃から、早めに結婚して、妊娠、出産とテンポよく進みたいと思っていた。母は、平均より高い年齢で私を産んだ。物心ついた頃、授業参観で見た同級生のお母さんが若くて驚いた。私が年齢を重ねた分だけ、親も年齢を重ねていく。だから、早く結婚して子どもを産んで、両親にも安心してほしかった。そう願えば願うほど、焦る気持ちだけが大きくなっていった。
振り返れば、男性と接する機会が少なかった。中学、高校は女子校へ通い、その後は、地元の女子大へ。“出会い”がなさすぎる。“さすがにこのままじゃまずい”という危機感に駆られ、“合コン”に参加しまくり、インカレサークル(複数の大学の学生で構成されるサークル)にも入った。学歴、恋愛歴、ルックス、就職先……。どれも、きらめくステータスに見えた。ふと、自分の“持ち物”を確かめてみる。“あれ、私は何も持ってないかも……”
社会人になって、すてきな出会いを期待した。初出社。けれど女性の中に、既婚者の男性がちらほらいるだけ……淡い期待はあっけなく散った。大学時代、ある人から言われた「白馬の王子さまは待っていてもこないよ」っていう言葉が妙に頭に残っていて、“何か行動しなきゃ”と思いマッチングアプリを始めた。
“ちょっと違うかもしれない”と思いつつ、何人か会ってみた。何度かデートして、勇気を出して伝えたことがある。
「私、創価学会員やねん」
固まる相手。そのまま、連絡が途絶えた。思い返せば、初めてできた彼氏とぎくしゃくしたのも、創価学会員だと打ち明けた時からだったなあ。そんなことを思いながら、この時から私は、生まれてからずっと生活の中にあった“信心”の力を試してみようと思った。これでもかというくらい理想の条件を並べて、“こんな人おらんやろ”と思いながら、祈った。そして、マッチした人と会い続けた。
「私、宗教やってんねんけど」
結局またバイバイされた。“もし自分が学会員じゃなかったら……”
そんなことを考えてしまう自分のこともイヤになった。“ああ、婚活と信仰、しんどいな”と泣きながら祈った。ある日、ふと思った。そういえば年齢で、検索フィルターをかけていた。試しにそれを外したら……いた! 年齢は15歳上。でも祈った通りの好条件。ついに来ました、学会のことを伝えても去らなかった人。彼とのお付き合いが始まった。
恋愛とは何だろう。
幼い頃から、早めに結婚して、妊娠、出産とテンポよく進みたいと思っていた。母は、平均より高い年齢で私を産んだ。物心ついた頃、授業参観で見た同級生のお母さんが若くて驚いた。私が年齢を重ねた分だけ、親も年齢を重ねていく。だから、早く結婚して子どもを産んで、両親にも安心してほしかった。そう願えば願うほど、焦る気持ちだけが大きくなっていった。
振り返れば、男性と接する機会が少なかった。中学、高校は女子校へ通い、その後は、地元の女子大へ。“出会い”がなさすぎる。“さすがにこのままじゃまずい”という危機感に駆られ、“合コン”に参加しまくり、インカレサークル(複数の大学の学生で構成されるサークル)にも入った。学歴、恋愛歴、ルックス、就職先……。どれも、きらめくステータスに見えた。ふと、自分の“持ち物”を確かめてみる。“あれ、私は何も持ってないかも……”
社会人になって、すてきな出会いを期待した。初出社。けれど女性の中に、既婚者の男性がちらほらいるだけ……淡い期待はあっけなく散った。大学時代、ある人から言われた「白馬の王子さまは待っていてもこないよ」っていう言葉が妙に頭に残っていて、“何か行動しなきゃ”と思いマッチングアプリを始めた。
“ちょっと違うかもしれない”と思いつつ、何人か会ってみた。何度かデートして、勇気を出して伝えたことがある。
「私、創価学会員やねん」
固まる相手。そのまま、連絡が途絶えた。思い返せば、初めてできた彼氏とぎくしゃくしたのも、創価学会員だと打ち明けた時からだったなあ。そんなことを思いながら、この時から私は、生まれてからずっと生活の中にあった“信心”の力を試してみようと思った。これでもかというくらい理想の条件を並べて、“こんな人おらんやろ”と思いながら、祈った。そして、マッチした人と会い続けた。
「私、宗教やってんねんけど」
結局またバイバイされた。“もし自分が学会員じゃなかったら……”
そんなことを考えてしまう自分のこともイヤになった。“ああ、婚活と信仰、しんどいな”と泣きながら祈った。ある日、ふと思った。そういえば年齢で、検索フィルターをかけていた。試しにそれを外したら……いた! 年齢は15歳上。でも祈った通りの好条件。ついに来ました、学会のことを伝えても去らなかった人。彼とのお付き合いが始まった。
彼は、優しい人。優しすぎて、いろいろ気にしちゃうタイプ。でも、私のことを気遣ってくれる。そんな思いやりが、いいなあと思った。それ以上に、うまく言葉で言えないけれど、自分と彼にある、目に見えないつながりのようなものを感じた。
彼が幸せでありますように、今日が幸せでありますように、と祈るようになった。交際してから初めて迎えた彼の誕生日。オリジナル動画を作ってプレゼントした。彼が大好きな映画に出てくる車。それを映像に入れたくて、新幹線に乗って撮影に行った。最後に自分のメッセージを吹き込んだ。喜ぶ彼の笑顔を見たら、かけた時間やお金、そして彼を思う気持ちも報われた気がした。
ただ、間もなく破局が訪れた。
理由はやっぱり信心。彼は「宗教はやだ」と一言。信仰は自分の全部じゃないけど、大切な私の一部。それをとったら私じゃない。だから、それも含めて愛してほしい。泣いて、泣いて泣きまくって、言葉にならない思いを祈った。
祈っているうちに、また彼から連絡が。心が躍る。そして、会うとやっぱり落ち着く。でも、信心の話をすると、また距離があく。もう、さすがに疲れた。そう思って、今度は自分から別れる決断をした。でも心は正直。すぐには切り替えられないから、別れた後も彼のことを祈っていた。
“彼に出会っていなかったら、こんなに誰かのことを祈っていなかったなあ。彼が信心を拒むほど、私は御本尊の前に座っていた。彼に信心のことを正しく知ってほしくて、私自身がたくさん学んだ。自分本位だった私に、誰かを大切に思う気持ちを教えてくれた彼。今、自分から離れていいのかな。そしたら、人生について、もっと深く学ぶ機会を逃しちゃうんじゃないかな”
そう思って、またよりを戻した。そのあと、また別れと復縁を繰り返して……今月、22回目のお付き合いが始まった。たぶん海外ドラマだと、シーズン4くらいはできる(笑)。
彼は、優しい人。優しすぎて、いろいろ気にしちゃうタイプ。でも、私のことを気遣ってくれる。そんな思いやりが、いいなあと思った。それ以上に、うまく言葉で言えないけれど、自分と彼にある、目に見えないつながりのようなものを感じた。
彼が幸せでありますように、今日が幸せでありますように、と祈るようになった。交際してから初めて迎えた彼の誕生日。オリジナル動画を作ってプレゼントした。彼が大好きな映画に出てくる車。それを映像に入れたくて、新幹線に乗って撮影に行った。最後に自分のメッセージを吹き込んだ。喜ぶ彼の笑顔を見たら、かけた時間やお金、そして彼を思う気持ちも報われた気がした。
ただ、間もなく破局が訪れた。
理由はやっぱり信心。彼は「宗教はやだ」と一言。信仰は自分の全部じゃないけど、大切な私の一部。それをとったら私じゃない。だから、それも含めて愛してほしい。泣いて、泣いて泣きまくって、言葉にならない思いを祈った。
祈っているうちに、また彼から連絡が。心が躍る。そして、会うとやっぱり落ち着く。でも、信心の話をすると、また距離があく。もう、さすがに疲れた。そう思って、今度は自分から別れる決断をした。でも心は正直。すぐには切り替えられないから、別れた後も彼のことを祈っていた。
“彼に出会っていなかったら、こんなに誰かのことを祈っていなかったなあ。彼が信心を拒むほど、私は御本尊の前に座っていた。彼に信心のことを正しく知ってほしくて、私自身がたくさん学んだ。自分本位だった私に、誰かを大切に思う気持ちを教えてくれた彼。今、自分から離れていいのかな。そしたら、人生について、もっと深く学ぶ機会を逃しちゃうんじゃないかな”
そう思って、またよりを戻した。そのあと、また別れと復縁を繰り返して……今月、22回目のお付き合いが始まった。たぶん海外ドラマだと、シーズン4くらいはできる(笑)。
昨年、父が体調を崩してから、母と一緒に介護をしている。最近、彼に、初めて実家の両親に会ってもらった。
そうそう、この前は、こんなうれしいことがあった。ごはんを食べた後、勤行をしていると、食器を片付ける彼の姿が見えた。“やばい、片付けもせんと自分勝手って思われる”と思ってチラッと彼を見たら、「いいよ、先やっといで」って言ってくれて。これまでは、聞く耳も持っていなかった彼の変化を感じた。信心する私を認めてくれたみたいで、ちょっと涙が出そうになった。彼に、震えそうになる題目の声を気付かれないように、急いで咳払いした。
時間はあっという間に過ぎていく。いつの間にか、私は30歳を超えている。以前と変わらず「結婚」をしたい気持ちはあるし、「出産」も意識している。でも、結婚という“ゴール”に押しつぶされたくはない。“何か”を持っているから幸福だとか、“何か”を持っていないから不幸だとか。そういう“持ち物”だけでは、幸せは決まらないことを祈りの中で実感したから。
彼との結婚も、その先の未来も正直分からない。でも、どんな答えが出たとしても、彼を愛したことには意味があったと思う。恋愛は打算的にするもの、そう思っていた私が、相手の全てを信じる“祈り”を学んだのだから。
誰かを大切に思う気持ちを恋というなら、ある意味それは、信仰と似ているのかもしれない。私のこれまでの歩みが、どういう“明日”と結びつくか、自分で自分を見守っていこうと思う。
昨年、父が体調を崩してから、母と一緒に介護をしている。最近、彼に、初めて実家の両親に会ってもらった。
そうそう、この前は、こんなうれしいことがあった。ごはんを食べた後、勤行をしていると、食器を片付ける彼の姿が見えた。“やばい、片付けもせんと自分勝手って思われる”と思ってチラッと彼を見たら、「いいよ、先やっといで」って言ってくれて。これまでは、聞く耳も持っていなかった彼の変化を感じた。信心する私を認めてくれたみたいで、ちょっと涙が出そうになった。彼に、震えそうになる題目の声を気付かれないように、急いで咳払いした。
時間はあっという間に過ぎていく。いつの間にか、私は30歳を超えている。以前と変わらず「結婚」をしたい気持ちはあるし、「出産」も意識している。でも、結婚という“ゴール”に押しつぶされたくはない。“何か”を持っているから幸福だとか、“何か”を持っていないから不幸だとか。そういう“持ち物”だけでは、幸せは決まらないことを祈りの中で実感したから。
彼との結婚も、その先の未来も正直分からない。でも、どんな答えが出たとしても、彼を愛したことには意味があったと思う。恋愛は打算的にするもの、そう思っていた私が、相手の全てを信じる“祈り”を学んだのだから。
誰かを大切に思う気持ちを恋というなら、ある意味それは、信仰と似ているのかもしれない。私のこれまでの歩みが、どういう“明日”と結びつくか、自分で自分を見守っていこうと思う。
【取材後記】
【取材後記】
“アラサー”と呼ばれる世代。記者もそこに身を置く一人だ。もしかすると、多くの人が、誰かの“正解”をなぞるように進んできた20代を超え、ふと立ち止まる30代なのかもしれない。仕事、結婚、出産、将来――社会から与えられる「問い」の数は増えるばかりなのに、自分の「答え」はなかなか見つからない。なのに時間はあっという間に過ぎていき、いつもどこかで焦っている。「いっそのこと誰か決めてくれ」と思うけど、結局、自分で決めるしかないことに気付く。
取材時、まっちゃさんは「私は自分が聞きたいと思うことしか受け止められないので(笑)」と語った。友人、先輩、家族……相談すると、それぞれの立場で、その人の経験を通してアドバイスをくれる。でも、その全てが自分に当てはまるとは限らない。
同世代の間で、「ロールモデルがいない」とよく耳にする。もしかするとそれは、絶対的なロールモデルを探そうとしているからかもしれない。一方、まっちゃさんは違った。「この人のこの考えはすてきだから取り入れよう」「あの人のあの経験談を参考にしてみよう」。いいとこ取り、部分的採用、そして自由に自己編集。まるで、“人間パッチワーク”。しかし、ただのつぎはぎではない。そのベースには、しっかりと“自分”という軸があった。祈りの中で自身と対話し、丁寧に研ぎ澄まされた「自分はどうしたいか」。そのセンサーの反応に正直に生きてみてもいいのかも、そう思える取材だった。
“アラサー”と呼ばれる世代。記者もそこに身を置く一人だ。もしかすると、多くの人が、誰かの“正解”をなぞるように進んできた20代を超え、ふと立ち止まる30代なのかもしれない。仕事、結婚、出産、将来――社会から与えられる「問い」の数は増えるばかりなのに、自分の「答え」はなかなか見つからない。なのに時間はあっという間に過ぎていき、いつもどこかで焦っている。「いっそのこと誰か決めてくれ」と思うけど、結局、自分で決めるしかないことに気付く。
取材時、まっちゃさんは「私は自分が聞きたいと思うことしか受け止められないので(笑)」と語った。友人、先輩、家族……相談すると、それぞれの立場で、その人の経験を通してアドバイスをくれる。でも、その全てが自分に当てはまるとは限らない。
同世代の間で、「ロールモデルがいない」とよく耳にする。もしかするとそれは、絶対的なロールモデルを探そうとしているからかもしれない。一方、まっちゃさんは違った。「この人のこの考えはすてきだから取り入れよう」「あの人のあの経験談を参考にしてみよう」。いいとこ取り、部分的採用、そして自由に自己編集。まるで、“人間パッチワーク”。しかし、ただのつぎはぎではない。そのベースには、しっかりと“自分”という軸があった。祈りの中で自身と対話し、丁寧に研ぎ澄まされた「自分はどうしたいか」。そのセンサーの反応に正直に生きてみてもいいのかも、そう思える取材だった。
◆電子版連載「わたしの『そろそろ』はまだまだ。」のまとめ記事はこちらから。過去の連載記事が読めます。
◆電子版連載「わたしの『そろそろ』はまだまだ。」のまとめ記事はこちらから。過去の連載記事が読めます。
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youth@seikyo-np.jp
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