名字の言

名字の言 60年前、ハンセン病の“隔離の島”に妙法の灯がともった 2025年7月1日

 歌集の序文に、こうある。「深海に生きる魚族のやうに、自らが燃えなければ何処にも光はない」。詠んだのは、ハンセン病の歌人・明石海人。失明し、人生の暗闇の中で編んだ『白描』はベストセラーとなり、読者の心に光をともした▼ハンセン病は、らい菌の感染によって引き起こされる。感染力は極めて弱く、遺伝もしない。だが、患者は国の施策で強制隔離された。その場所の一つが、瀬戸内海に浮かぶ岡山県の長島である▼現金の没収、監禁室の設置……。入所者は厳しく管理され、尊厳を傷つけられた。この「隔離の島」に妙法の灯がともったのは60年ほど前▼その軌跡を残そうと、岡山支局の青年記者が取材を重ね、連載を立ち上げた。第1回(6月1日付)は“長島の母”と慕われる女性部員。不条理の闇を照らす光は「信心以外になかった」。池田先生の励ましが心に明かりをともしてくれた――そう語る彼女の歩みは、掲載後、大きな反響を呼んだ▼ハンセン病の歴史は、コロナ禍を経験した私たちに、今なお問いかける。人間とは、幸福とは、生きるとは何かを。連載名は「いのちの翼を ハンセン病を生きる」。わが生命を燃やし、懸命に生き抜いてきた人たちの姿から、学ぶことがある。(子)