仏法の教え
〈子どもと学ぶ仏教説話――ミライの冒険〉 雪山で凍える鳥たち 2024年8月8日
創作童話「子どもと学ぶ仏教説話――ミライの冒険」では、主人公のミライが、仏教説話の世界を巡る冒険に出かけます。座談会の未来部コーナーなどでご活用ください!(イラスト 逸見チエコ)
「うぅ……寒い」
ミライの、つぎの冒険は、どうやら雪山の世界のようです。
ブルブルふるえながら、ミライが歩いていると、声が聞こえてきました。
「このままでは、凍ってしまうよ」
「朝になったら、暖まるための巣を作ろう」
2羽の鳥が、岩のかげで寒さをしのいでいたのです。
「なぜ巣がないの? ミライも、巣を作るのを手伝うよ!」
鳥たちといっしょに、寒さに、たえながら朝を待つことにしました。
ようやく夜が明けて、太陽がのぼりました。
「ふぅ、暖かくなってきた。さぁ、巣を作ろう!」
やる気まんまんのミライ。
ところが、鳥たちが、あくびをしながら言うのです。
「暖かくなったら、眠くなってきた」
「巣を作るのは、たいへんだ。また今度でいいんじゃないかな」
このように、2羽の鳥は、これまでずっと、朝が来ると夜の寒さを忘れ、巣を作ってこなかったのです。
「ダメだよ。また寒い夜は来るんだから。さぁ、今のうちに頑張ろうよ!」
ミライは、鳥たちを励ましながら、いっしょに巣を作り始めました。
「よし。できた!」
太陽が沈むころ、やっと巣ができました。
「あぁ、これで寒さに凍えなくてすむね」
「巣を作っておいて、本当によかった。ありがとう、ミライ!」
よろこぶ鳥たちを見ながら、ミライは思いました。
“いつかじゃなくて、今。できることから、やることが大事なんだ”
また一つ、ミライは成長しました。
(つづく。前回は7月11日付に掲載)
夜の寒さに凍え、“今度こそ巣を作ろう”と決意するものの、暖かい昼になると眠ってしまい――今回のお話の基になった「雪山の寒苦鳥」の説話では、寒苦鳥は最後まで巣を作れず、寒さに苦しみ続けました。今回は、ミライが、これまでの失敗を嘆くのではなく、“今から、ここから始めよう”と決意して、まず一歩を踏み出す物語です。
池田先生は、次のようにつづっています。
「すべては『今から』『これから』『きょうから』始まるのです。前へ前へ、朗らかに粘り強く進んでいけば、失敗したことだって、次の成功につなげることができる」
「大切なのは、『今は何をする時なのか』と考えて、それをやりきることなのです」
焦らず、少しずつでも、できることから始める――その勇気の挑戦の中に、勝利の太陽が輝くのです。