縁覚の世界。縁覚が到達する部分的な覚りの境涯。縁覚は、六道輪廻する因となる煩悩を断滅して、死後は二度と生まれて来ないことを目指す。大乗の立場からは、これは「灰身滅智[けしんめっち]」とされ、成仏できないと批判された。また四土の説では、声聞の阿羅漢や縁覚のように、方便の教えを修行して煩悩の一部を断じた小乗の聖者は、方便有余土に生まれるとされる。「観心本尊抄」には「世間の無常は眼前に有り豈人界に二乗界無からんや」(241㌻)とあり、われわれ人界にそなわる声聞界と縁覚界の二乗は、無常という仏教の覚りの一分を覚知することにうかがえると示されている。これに基づき仏法の生命論では、縁覚界は、自分と世界を客観視し、現実世界にあるものはすべて縁によって生じ時とともに変化・消滅するという真理を自覚し、無常のものに執着する心を乗り越えていく境涯とされる。 縁覚/灰身滅智/四土/二乗/声聞